
オスマン帝国・サファヴィー朝・ムガル帝国。
この3つ、全部イスラム世界の有名な大帝国です。でも、ただの「イスラム国家」というくくりではもったいないくらい、それぞれに個性も違いもドラマもたっぷりあるんです。
ここでは、特にオスマン帝国とサファヴィー朝、ムガル帝国の違いと共通点を、わかりやすく整理してみましょう!
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比較項目 | オスマン帝国 | サファヴィー朝 | ムガル帝国 |
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成立時期 | 1299年(オスマン1世) | 1501年(イスマイール1世) | 1526年(バーブル) |
最盛期 | 16世紀(スレイマン1世) | 16世紀中頃(アッバース1世) | 17世紀(シャー・ジャハーン) |
政治体制 | スルタンによる専制君主制 | シャーによる神権的君主制 | 皇帝による中央集権制 |
宗教 | スンニ派イスラム | シーア派イスラム(十二イマーム派) | スンニ派イスラム(多宗教寛容) |
首都 | イスタンブール | タブリーズ → イスファハーン | デリー、アグラ |
主な領土 | バルカン半島、アナトリア、中東、北アフリカ | イラン高原、コーカサス、イラク一部 | インド北部、デカン高原 |
軍事 | イェニチェリ(常備歩兵)、大砲 | 騎兵中心、トルコ系部族戦力 | 騎兵・火器部隊・ゾウ軍団 |
文化と芸術 | オスマン建築(ブルーモスク)、写本芸術 | ペルシャ文化重視(細密画・詩) | インド・ペルシャ融合(タージ・マハル) |
最終的な衰退 | 1922年に終焉(トルコ共和国誕生) | 1736年に滅亡(ナーディル・シャーのクーデター) | 1858年にイギリス直轄領へ(東インド会社支配後) |
まずは基本の位置関係と時代感を押さえておきましょう。この3つ、実は同じ時期に並び立ってた「三大イスラム帝国」なんです。
成立:1299年/終焉:1922年
本拠地は現在のトルコで、最大版図では東ヨーロッパ・中東・北アフリカまで支配しました。 宗派はスンニ派で、スルタンがカリフ(イスラム共同体の長)も兼ねていました。
成立:1501年/終焉:1736年
イランを拠点にしたシーア派(十二イマーム派)の帝国で、宗教色が非常に強いのが特徴。 オスマン帝国とは宗派の違いでバチバチになりがちでした。
成立:1526年/終焉:実質的には18世紀
インド北部を中心に支配したトルコ系・モンゴル系の王朝。 文化的にはペルシャ風+インド文化が混ざった独自の華やかさがあります。
同じ「イスラム帝国」といっても、宗教と政治の距離感はバラバラでした。それぞれの宗教観・寛容度・統治スタイルには、驚くほどはっきりとした違いがあります。
オスマン帝国はスンニ派の国教を持ちながら、キリスト教徒やユダヤ教徒をミッレト制度で自治させ、実利優先で共存していました。
宗教を政治に利用しつつも、異教徒との付き合いに柔軟だったのが特徴です。
サファヴィー朝は、国家レベルでシーア派を強制し、スンニ派や他宗教に対してはかなり排他的でした。
神秘主義的な色合いも強く、王が宗教的カリスマとして君臨した点で、他と一線を画します。
インドではイスラムは少数派。だからムガル帝国は多くのヒンドゥー教徒との共存が不可避でした。
皇帝アクバルは宗教寛容政策(ズィミンダール制度など)を進め、多宗教国家としてうまくやっていた時期もあります。
宗教や政治だけでなく、見た目の華やかさや文化の発展にも各国のカラーが出ていました。今でもその痕跡がしっかり残っているのがまた面白いところです。
建築ではブルーモスクやスレイマニエ・モスクなど、巨大で統制感のある美が特徴。
文化はイスラム+ビザンツ+ペルシャの要素がミックスされていて、秩序と権威を重んじる美学がにじんでいます。
タージ・マハルに代表されるように、ムガル帝国はペルシャ風の優美さ+インド的な装飾性が融合した独特の美しさがありました。
絵画、文学、建築すべてがデコラティブで豪華なのが特徴です。
イマーム・モスクなどの建築はブルータイルの装飾美が際立ち、都市イスファハーンは「世界の半分」とまで呼ばれました。
宗教美術や書道にもシーア派的な神秘と内面性が強く現れています。
違いはたくさんあったけど、やっぱり「帝国」としての共通点もあります。特に行政、軍事、文化面でのシステム構築の巧みさは三国すべてに共通していました。
3帝国ともに広い領土を効率よく管理する官僚制度を持っていました。
徴税や土地管理もかなりしっかりしていて、帝国としての統治の技術レベルは非常に高かったんです。
いずれも強力な常備軍を抱え、拡大期には積極的に戦争を仕掛けていました。 とくにオスマンのイェニチェリ、ムガルのマンシュダール、サファヴィーのクズルバシュなど、個性的で制度化された軍隊を持っていたのも共通点です。
オスマン帝国、サファヴィー朝、ムガル帝国――それぞれ全く違う顔を持ちながら、同じ時代を生きた“兄弟”のような存在でした。
イスラム世界の多様性と広がりを知るには、まさにこの三国が最適な窓口なんです。