「オスマン帝国の復活」を目指す「新オスマン主義」とは何か

現代トルコのニュースや政治の話でたびたび出てくる「新オスマン主義(Neo-Ottomanism)」って言葉、気になったことありませんか?
これは、かつてのオスマン帝国の栄光を“現代的な形で”取り戻そうとする思想・外交スタンスのことなんです。
でも「帝国を復活させる」って、まさか本当に征服するつもりなの?……そう思うかもしれませんが、実際にはもっと“じわっと”広がる戦略だったりします。
では、「新オスマン主義」とは何なのか?どこから来たのか?くわしく見ていきましょう!

 

 

「新オスマン主義」ってどんな考え方?

一言でいうと「かつてのオスマン帝国の影響圏を、21世紀的に再建しよう」という思想です。
ただし、昔みたいに軍隊で占領しようって話ではなく、文化・経済・外交での影響力拡大がポイントなんですね。

 

「帝国の記憶」を利用したソフトパワー

オスマン帝国って、今のトルコだけじゃなくて、中東・バルカン・北アフリカまで広く支配してましたよね。
新オスマン主義は、そういった地域と“歴史的なつながり”や“イスラームの共通性”を強調して、現代トルコがリーダーシップをとる正当性をアピールするんです。

 

「東も西も取り込む」多軸外交の一環

これは西洋一辺倒だった近代トルコ外交からの転換でもあります。
ヨーロッパ(EU)だけじゃなく、アジア・アフリカ・旧オスマン領とも積極的に関わっていこうという、“多極的な視野”が前提になっているんですね。

 

いつ・誰がこの路線を取り入れたの?

「新オスマン主義」という言葉が注目され始めたのは、2000年代以降のエルドアン政権の外交スタイルに対してでした。
でもその思想のタネは、もっと前からあったんです。

 

語源は19世紀の“オスマン自由主義”

実は「新オスマン主義(ヤーニ・オスマンルジュルク)」という言葉自体は、19世紀のオスマン帝国改革派の運動にも使われていました。
その頃は憲法や議会の導入を目指す“西洋化志向”だったんですが、現代の新オスマン主義はむしろ“伝統の再評価”という逆方向に進んでいるのが特徴です。

 

アフメト・ダウトオールが理論化

2000年代後半、当時の外相だったアフメト・ダウトオールが著書の中で、「トルコはオスマンの遺産を活かして、“中心的プレイヤー”になるべきだ」と主張。
これがエルドアン政権の外交戦略に組み込まれ、イラク、シリア、カタールなど旧オスマン領への関与が活発化しました。

 

どういう形で「復活」を目指してるの?

じゃあ、「新オスマン主義」って実際にどんな形で現代トルコの動きに表れているの?――というのが一番気になるところですよね。
昔みたいに軍隊で征服!ってわけじゃなくて、現代的な外交や文化の手段を使って、“静かに影響力を広げていく”のが特徴なんです。

 

文化・宗教で“ソフトに”影響力を広げる

新オスマン主義では、直接的な軍事力よりも文化や宗教を使った“ソフトパワー”外交が重視されています。
これは「かつての帝国の一部だった国々に、トルコへの親近感を持ってもらおう」という作戦でもあるんです。

 

  • トルコのドラマや映画(例:『マグニフィセント・センチュリー』)を旧オスマン領で積極配信
  • 各国でのモスク建設支援宗教指導者の育成
  • トルコ語教育や留学プログラムの提供

 

こうした取り組みで、トルコは「現代のオスマン」として文化的なつながりを再構築していっているんです。

 

軍事や外交でも積極姿勢に

「平和的」な手段だけじゃなく、トルコは軍事・安全保障面でも“頼れる存在”としての立場を築こうとしています。
特に、中東や中央アジアの情勢に対しては積極的に関与しているのが目立つんです。

 

  • シリアやイラクへの軍事介入と駐留部隊派遣
  • カタールとの同盟関係強化(実際に軍事基地を設置
  • アゼルバイジャンへのナゴルノ・カラバフ戦争での軍事支援

 

こういった行動は、「トルコ=イスラーム世界のリーダー格」というメッセージを世界に発信する手段でもあるわけですね。

 

その考え方には賛否もある

「新オスマン主義」は国内外で注目を集める一方で、強権的で帝国主義的だと批判されることも少なくありません。

 

懐古主義?それとも現実主義?

支持者からは「歴史的影響圏を活かした戦略的外交だ」と評価される一方で、批判的な人からは「帝国の幻想にとらわれた懐古主義」「民主主義より威信を重視している」と見られることも。

 

国内統治の正当化にも使われる

「オスマンの正統な後継」というイメージは、トルコ国内でもナショナリズムや宗教保守層への訴求力があります。
そのため、新オスマン主義は外交戦略であると同時に、国内政治のレトリックとしても活用されているんですね。

 

「新オスマン主義」とは、かつてのオスマン帝国が築いた広大なネットワークや文化的影響力を、現代的な手段(外交・文化・宗教・軍事)で再構築しようとする発想です。
決して昔のような征服を目指すものではなく、“トルコ中心の多極的世界”を実現したいというビジョン。
でもその背景には、歴史、宗教、そして地政学が複雑に絡み合っているんです。